愛媛新聞社東予支社 今治編集部長 武田 泰和 様
昨年度に続き、新型コロナウイルス禍の中、広報紙を作られた皆さんは学校活動が制限される中、掲載内容であるネタ探しや寄稿の収集、ご苦労されたのではないでしょうか。おつかれさまでした。
私は今回で2度目の審査を担当させていただきました。その上での所見を申し上げます。
中学校から審査したのですが、ほとんどが運動会の写真を前面に出していました。構成はそれぞれ工夫されていて特に申し上げることはありません。ただ、審査という点では、別の発行回で行いたかったというのが正直なところです。
その中で、日吉中学校はあえて運動会の発行回を外して応募されたのだと思います。新入生全員の集合写真や先生の紹介など「型」ができているのだと思う一方、PTA座談会は興味深く読ませていただきました。校長先生がPTA役員の方々の質問に答え、生徒の学校生活や進路を説明する形式をとっています。広報紙での校長先生の登場は、各年度最初の発行回に寄稿する形がほとんどだと思いますが、Q&Aのやりとりで学校側が伝えたいこと、「生徒の親」が知りたいことをフランクに伝える工夫を感じました。
小学校は、学校ごとに個性のある紙面づくりに取り組まれていると思います。昨年度の応募校に加え、鳥生小学校と国分小学校の応募がありました。参加校が増え、紙面展開のヒントが増えることはいいことだと思います。
中学校ほどではありませんが、運動会の写真が目立ちました。その上で気になった点を挙げさせていただくと、紙面の大きさと写真のバランスです。小学校は応募のあった広報紙のうち、8割がA4判でした。印刷の画質にもよるとは思いますが、全体を写すあまり1人1人が小さくなってしまい、子どもたちの表情がよく分からない写真もありました。一方で、比較的小さな写真を多用し、全体的ににぎわいを演出するテクニックもあります。
画角もズーム(アップ)とワイド(広角)を使い分けることも大切です。1枚にたくさんの子どもたちを載せようとするとどうしてもワイドになってしまいます。1人1人が小さくなり、何をしているのか分かりづらい写真になることがよくあります。そこで、ワイド写真の中に何をしているかが分かる写真を入れる加工や、ワイド写真1枚とズーム写真数枚の組み写真で雰囲気を伝える工夫が必要でしょう。
それぞれの写真(群)に付ける見出しやキャプションも重要です。手間は掛かりますが、児童の一言を載せて、写真との関係性を示し、臨場感、広報紙の参加者を増やす工夫をしていた紙面も複数ありました。
乃万小学校は教職員の皆さんの好きなアニメを紹介していました。なかなか学校になじめない児童には、この先生のところに行ったら好きなアニメの話ができるかもしれないよというメッセージにも感じました。私自身は小中学校とも千人以上のマンモス校で過ごしたので、先生との距離感は今の小中学校の感覚と違うとは思いますが、アニメの話が先生と打ち解けたり、学校に来る動機になったりするかもしれないという試みはいいと思いました。
少し技術的な話になりますが、一般的に縦書きの新聞は右開きが基本なので、読者に奇数ページを最初に見てもらうよう設計されています。2ページ目よりも3ページ目が重要。右面より左面優先という考え方です。その上で、伯方小学校の紙面はページをめくったところに「ようこそ伯方小学校へ」としてカラー表裏1枚で新1年生のコメントを紹介しています。昨年も同じ構成でしたが、紙面で新1年生を紹介したいというコンセプトが明確で、1年生の保護者にとっては中面だけを抜いて保管しておくこともできる記録性のある工夫を感じました。
昨年もお話ししましたが、PTA広報紙ですので、PTAの活動紹介を積極的に掲載するべきでしょう。夫婦共働きの家庭も多く、役員選出が難航する学校は少なくないと想像します。活動を記録し、理解を促す意味でも、役員や係に選出されればどのような活動をするか伝え続けることは重要だと思います。
紙面編集をされている皆さんは限られた予算の中で取材や機材、印刷委託などの費用がかかり苦労されていると思います。年度予算から算出した1部発行コストを計算してみました。立花小学校は約3円で、応募校の中で最も低かったです。自校で印刷し、写真などの鮮明度は高くはありませんが、子どもたちの学校活動を伝えるという点では十分役割を果たしていると感じました。
この2年間、新型コロナの影響で社会活動が大きく制限されていますが、コロナが収束し、来年の審査では児童、生徒の皆さんのさまざまな学校生活を紹介した紙面が見られることを期待しています。